研究概要 |
1.常磐、鹿島灘沖海域にかけて二年間にわたってCTD,XCTD,ADCP観測を行った。 (1)親潮系と見られる低塩分水の広がりに対応して水温塩分の鉛直分布に顕著な逆転構造が発達した。この構造中では、低温低塩な水塊と高温高塩な水塊が鉛直方向に交互に重なり合っていることから、二重拡散対流が発達する可能性があることが示唆された。 (2)観測時の鹿島沖では水温逆転は沿岸より沖合で多く見られ、弱い逆転は観測海域全域で見られたのに対し、強い逆転は北方で多く見られた。強い逆転が多く見られたのは、異なった水塊が水平方向に接し、異なった特性を持つ水塊の水平貫入が示唆される場所であった。一方、弱い逆転が見られたのは、冷水塊の下層であった。 2.北海道南から、黒潮続流域までの広範囲にわたってとられたCTDデータの中立面解析を行い、キャべリングとソルトフィンガーが北太平洋中層水の変質過程に重要な役割を持つことが示唆された 3.極域での深層水形成に関わる深い対流プロセスを調べるために、thermobaric効果により引き起こされる対流の物理機構を数値実験によって調べた。 (1)線形近似を行った場合、安定な密度成層にも係わらず、計算開始とともに初期擾乱が発達し、plumeが発生し,その後深い対流へと発達し、thermobaric効果による対流発生が確認された。 (2)(1)のケースについて、塩分拡散係数と温度拡散係数の比をτ=K_S/K_T<1.0とした結果、二重拡散がactiveな場合には対流の発達が抑えられることが示唆された。 4.Lock-exchange型流れに対する二重拡散対流の影響の数値実験を、過去に行ったものから境界条件を変更させて行った。その結果、二重拡散対流による鉛直輸送により、一成分系の密度流で発生するK-H不安定が押さえられること、また、境界の形状が異なることなどを見いだした。
|