湖における懸濁物質は、主として河川から流入する外来性のものと、湖内で生産される植物プランクトンなどの自生性のものに大別される。本研究では、主に観測面からこれらの物質の挙動を捉えるとともに、物質相互の関係について考察を行なった。 本年度は、びわ湖南湖と北湖南部水域においてTCTプロファイラによる水温・電気伝導度・濁度およびクロロフィルaの三次元分布観測と透明度・pH・風向風速などの観測を5月から毎月1回実施するとともに、各層の採水を行い懸濁物濃度や強熱減量を測定し、さらに蛍光X線による懸濁物質の化学組成分析や顕微鏡による粒径と植物プランクトンの観察を行った。また、自記流向流速水質計と濁度計を野洲川河口沖に設置し、流況や水質の連続観測を実施した。さらに野洲川とびわ湖にサーミスタチェーンを設置し、水温の連続観測から河川水が流入する深さを明らかにした。 これらの観測で得られた資料から、河川水による懸濁物質の供給量や供給される深さを明らかにするとともに、河口沖における河川水の分散過程をある程度把握することができた。また、蛍光X線解析や顕微鏡観察により外来性および自生性の懸濁物の定量的な評価を行った。一方、連続的に測定された湖流と濁度の変動から、lake snowの堆積阻害や新生堆積物の巻き上がりなどに関して力学的な考察を行っている。また、湖底高濁度層内の濁度の時間変化に基づき、水温躍層から湖底に供給される懸濁物の質とフラックスの評価も行なった。
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