湖における懸濁物資は、主として河川から流入する外来性のものと、湖内で生産される植物プランクトンなどの自生性のものに大別される。本研究では、主に観測面からこれらの物質の挙動を捉えるとともに、物質相互の関係について考察を行なった。 本年度は、びわ湖の野洲川河口沖を中心とする水域においてTCTプロファイラによる水温・電気伝導度・濁度およびクロロフィルaの三次元分布観測と透明度・pH・風向風速などの観測を4月から毎月1回実施するとともに、各層の採水を行い懸濁物濃度や強熱減量を測定し、さらに蛍光X線による懸濁物質の化学組成分析や顕微鏡による粒径と植物プランクトンの観察を行った。また、野洲川とびわ湖にサーミスタチェーンを設置し、水温の連続観測から河川水が流入する深さを明らかにした。さらに、北湖においてADCPによる連続測流も実施した。 これらの観測で得られた資料から、河川水の流入深度や懸濁物質の供給量の季節変化を明らかにするとともに、野洲川河口沖における河川水の分散過程を把握することができた。また、クロロフィルaの観測結果と懸濁物質の化学分析により、自生性と外来性懸濁物の存在割合や相互関係について考察を行った。特に、南湖の赤野井湾や矢橋沖浚渫窪地など特殊性の高い水域で懸濁物質の季節変化を追跡することにより、自生性と外来性懸濁物の挙動について知見を得た。さらに、湖水と河川水の水温変化に基づく解析から、年間を通した河川水の流入パターンや流量を明らかにし、びわ湖水の滞留時間を高精度で評価することができた。
|