1. ため池堆積物中の走磁性バクテリアの発見。西条盆地の5カ所のため池、小河川2カ所、湿地1カ所から表層の堆積物を採取し、本研究で購入した光学顕微鏡で走磁性バクテリアの存否を調べた。その結果、鏡山大池で多量の走磁性バクテリアを見いだした。しかし、同じ方法で堆積物を採取したにも関わらず、他の7カ所では、僅かの走磁性バクテリアさえも見いだせなかった。今後、同じため池で何カ所か堆積物を採取し、ため池によって走磁性バクテリアの存否が分かれるのか否かを明らかにし、さらに、走磁注バクテリアのいるため池などをできるだけ多く探し、どのような条件が走磁性バクテリアの存否に関係するか調べていく予定である。なお、堆積物の採取方法、走磁性バクテリアの観察方法は、国立極地研究所の船木博士に教授していただいた。 2. 軽便なため池堆積物柱状試料採取方法の確立。1mまでの堆積物柱状試料の採泥器は自作することを予定していたが、試作販売されたので校費で購入した。その採泥器を用いて、2隻のゴムボートの上に渡した板の上で堆積物柱状試料を採取する方法を考案した。この方法によって、広島大学構内のぶどう池で砂の層までの0.4〜1mの柱状試料が採取できた。柱状試料の一部には多くの薄い層も見られ、あまり乱されずに採取できたことが分かった。得られた3本の柱状試料について、試験的に帯磁率の測定を行った。今後、工学部の静間教授に堆積物中の鉛210の変動をγ線スペクトルスコピーで測定していただき堆積速度を推定し、次年度購入予定の等温残留磁化着磁装置などを用いて、堆積する磁性鉱物の経年変化、埋没後の深さに伴う変化、走磁性バクテリアの有無による堆積物中に磁性鉱物の挙動の違いなどを調べていく予定である。
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