研究概要 |
インドネシア・ジャカルタに設置された小型ミーライダーにより対流圏の雲の連続観測を行い、雲低高度を算出した。また、NOAA衛星の長波放射(OLR)データ、インドネシア気象局高層観測データ、ECMWF(欧州中期気象予報センター)客観解析データを収集し、雲低高度分布と大規模大気循環場との関係を解析した。さらに、TRMM PR(熱帯降雨観測計画衛星降雨レーダー)データを収集・処理し、雲底分布と降雨の鉛直分布との関係の解析を開始した。 ライダー観測雲低高度データは1998年1月1日-2月25日(PR1)、6月19日-7月16日(PR2)、10月7日-11月30日(PR3)、12月1日-1999年3月7日(PR4)、1999年6月14日-8月30日(PR5)の5期間に得られた。降雨量の多かったPR2, PR4期には、高度約1kmの大気境界層高度のピークの他に、約5km付近に顕著な雲底高度ピークの存在が明らかになった。このピークは小雨のPR1期には見られない。OLRにより熱帯域全球スケールの対流活動分布を調べた結果、1998年5月を堺に赤道付近の東西大気大循環(ウォーカー循環)が、エルニーニョ型からラニーニャ型に急遷し、インドネシア付近は5月中旬以降年末まで降水活動の盛んな大循環の上昇域にあった。TRMM降雨データを対流性/層状性に分けた統計解析の結果、インドネシアが大規模場上昇域に入る時期には、対流システムに伴う層状雲(アンビル雲)からの降雨量が、対流性の降雨量に匹敵することが分かった。PR2, PR4期に観測された5kmの雲低高度ピークはこのようなアンビル雲に対応すると推測される。また、最近の研究で熱帯の融解層(0°C付近)の大気安定層の存在が指摘されているが、機構は未解明である。今後、GMSによる衛星からの雲頂データ、TRMM PRデータの詳細解析を行い、5km雲低高度と融解層付近の大気安定層の生成機構・対流システム構造の相互関係を調べる計画である。
|