研究概要 |
衛星による宇宙観測や惑星探査では微少磁界の高精度検出が要求されていて,フラックスゲート磁力計のセンサ改良や磁力計の低雑音化が求められている。今年度はこれまでの実験の総合的なまとめとして,すべての国産センサコアおよび米国からの輸入センサコアのS/N比,感度の比較,温度特性について計測実験を行い,コアのB-H曲線の磁化特性との相関および磁力計として最適な励磁周波数や励磁振幅やコア形状の特定を行った。 計測した主なコアは、衛星搭載用国産コアとロケット姿勢計コアおよび米国衛星搭載用コアとロシア製コアを用いた。その結果、励磁周波数の最適値は,8kHz付近で最もS/Nが良く,励磁の最適値は10Oeで雑音が小さく感度が良い。コアの形状はパーマロイリボンの長さに反比例した雑音で,従ってパーマロイ層数が多いほど雑音は小さい傾向が得られた。コアのサイズは直径のほぼ2乗に比例して感度が上がり,パーマロイ層数には無関係であることが判明した。同程度のサイズの国産コアと米国産コアとの比較は,国産コアの方が30-40%感度が優れているが,温度特性についてはコア材の磁化特性の残留磁束密度と磁力計出力感度Aoおよび磁力計コア雑音Ncの間には、励磁周波数をパラメータとして、非常によい定量的相関関係があることが判明した。結論としては、BrとAoは励磁周波数が高いほど大きくなり、Ncは励磁周波数が高いほど小さくなるが、10KHz以上ではBr,Ao,Ncの値がほぼ一定となる。従って、励磁周波数の最適値は10KHz程度である。また、衛星用コアの同じサイズ(27mmφ、パーマロイ6層)で励磁周波数10KHzでの国産コアと米国産コアの比較では、雑音はほぼ同じ0.02nT(rms)程度であったが、感度は国産コアが米国産コアより優れていることが判明した。しかし,温度変化に対してはボビンの温度膨張係数がコアのそれに近い米国産のほうが優れている。
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