木星電波源から放射された電波(デカメートル波)が、衛星イオの軌道近くを貫く木星の磁力線に沿ってあたかもスダレのように分布するプラズマのスクリーンにより変調を受ける伝搬現象(モジュレーション・レーン)を利用して、木星電波源の高精度位置測定をするのが本研究の目的である。 本年度は、研究代表者の今井が、広帯域で観測された木星電波のダイナミックスペクトラムを解析し、その中に見られるモジュレーション・レーンの抽出を行った。特に、レーンの曲がり具合は、木星の磁力線と電波源の位置関係と密接に関係していることから、これを精密に測定して、従来にない高い精度で電波源の位置情報の収集を行った。また、フロリダ大学から提供された惑星探査機ボイジャーの木星電波のダイナミック・スペクトラムの特定の特徴を、モジュレーション・レーンで得られた固定放射角モデルでシミュレーションすることにより説明できることがわかった。これは、今まで説明できなかった木星電波のダイナミックスペクトラムの特徴の一つを解明できたということで、非常に重要な研究成果であると考えている。 また、研究分担者の佐藤は、NASAのIRTF 3m赤外線望遠鏡により観測された木星オーロラ観測データの解析を行い、その結果をもとにNASAのコナニー博士とともに、木星の新しい磁場モデルをJGRに発表した。
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