木星電波源から放射された電波(デカメートル波)が、衛星イオの軌道近くを貫く木星の磁力線に沿ってあたかもスダレのように分布するプラズマのスクリーンにより変調を受ける伝搬現象(モジュレーション・レーン)を利用して、木星電波源の高精度位置測定をするのが本研究の目的である。 平成10年度に引き続き、平成11年度も研究代表者の今井が、広帯域で観測された木星電波のダイナミックスペクトラムを解析し、その中に見られるモジュレーション・レーンの抽出を多数行った。抽出されたモジュレーション・レーンは、直線ではなく曲がっており、その度合いは、木星の磁力線と電波源の位置関係と密接に関係していることから、これを精密に測定して、従来にない高い精度で電波源の位置情報を得ることができた。また、研究分担者の佐藤は、NASAのIRTF3m赤外線望遠鏡により観測された木星オーロラ観測データの解析を行い、その結果をもとにNASAのコナニー博士とともに、木星の新しい磁場モデルをJGRに発表した。 平成11年度は、この新しい木星磁場モデルの情報も含めたモジュレーション・レーンのシミュレーションを行った。結果としては、従来のO4モデルをベースにした木星磁場モデルのものと、差がほとんどないことが確認された。また、赤外線で観測された木星オーロラの情報をもとに、木星電波源の位置に関係するLシェルの値についての比較検討を行った。特に、衛星イオに関連しないNon-Io-Aと呼ばれる電波源のモジュレーション・レーンのデータとシミュレーションの結果との対比から、そのLシェルが4から7であることがわかった。このことから、イオプラズマトーラスが、Non-Io-A電波源のエネルギー源であるという非常に重要な情報を得ることができた。 本研究で得られた新しい木星電波源の高精度位置情報は、木星電波放射機構の解明に対して、大きな貢献をすることができると考えている。
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