研究概要 |
本研究の目的の一つはゴンドワナ大陸における北上山地の位置づけを行うことにある.本年度は特に北上山地におけるカンブリア紀〜石炭紀の大成活動の性格づけを行った.具体的には,これまで得られた5億年〜4億年前後の,早池峰-宮守超苦鉄質岩〜苦鉄質岩,正法寺閃緑岩,ならびに焼石岳南麓のトーナル岩などの古生代大成活動とゴンドワナ大陸の形成・発展・分裂との関係について公表し,南部北上古陸の基盤は中国南部の付加褶曲帯の延長と考えられることを提案した.さらに,白亜紀初期における北上山地と北海道南西部とのテクトニクス的関係を花崗岩類の性格から検討を行い,北上山地のI帯花崗岩類は北海道苫小牧付近から気仙沼沖まで延びることを明らかにした(99年度口頭発表予定).また,古生代以降の島弧的性格をもつ東北日本の火成活動と,中央アジア地域における古生代以降の大陸内部,島弧,あるいはモンゴル-オホーツク褶曲帯火成活動の比較検討を行うため,モンゴルの火成活動について予察調査を行った.共同研究者の一人,吉田は中新世日本列島における微小プレートの意義について検討し,新しい考え方を提案した.その他,北上山地の古第三紀礫岩中に保存されている白亜紀中期〜後期火成活動の意義付け,新第三紀における中部日本から東北日本の火成活動の性格について検討している.従来,その意義について検討されてこなかった北上低地帯の鮮新世火山岩類の岩石学的・地球化学的検討の結果,第四紀火山活動とそれ以前の火成活動とを結びつける重要な意義のあることが明らかにされた(99年度口頭発表予定).次年度は,これまでに得られた結果と,日本周辺の環太平洋地域を中心とした新しい島弧による中生代以降の火成活動とを関連づけ,ゴンドワナ大陸の分裂以降の環太平洋地域における日本列島のテクトニクスの位置づけを明らかにする.
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