研究概要 |
高温の気固混相流として移動・堆積する大規模な火砕流堆積物には溶結度の変化が一般的で、非溶結から強溶結をへて二次流動を示すものまで、堆積時の温度の異なりが推定される。そこで、詳細な熱消磁実験に基づき、給源が等しく、岩相が異なる阿蘇火砕流堆積物の4回の噴火サイクルの火砕流堆積物のうち、阿蘇-3サイクルの中で最も噴出量の多く無斑晶安山岩質のスコリア流堆積物である阿蘇3B火砕流堆積物,阿蘇-4サイクルの中のパミスレンズの絞り出しが認められる強溶結を示す阿蘇-4A火砕流堆積物と層厚がカルデラ壁で5mと薄いにも変わらず溶結を呈する阿蘇-4B火砕流堆積物からそれぞれ2地点ずつ合計60個の試料をハンドサンプリングによって採取した.ハンドサンプリングによる試料を室内で円筒形の試料に整形し、100、150、200、250、300、350、400、450、500、530、560、590℃の温度について段階熱消磁実験を行い、交流消磁装置を用いて交流実験を行い磁化の安定性を確認した。段階熱消磁実験の結果、阿蘇-3B・4A・4B火砕流堆積物はほぼ1成分の残留磁化を有し、560℃以上の温度で堆積したと考えられる。阿蘇-4B火砕流堆積物の残留磁化は他の阿蘇カルデラ起源の火砕流堆積物の残留磁化に比べて1桁大きな値をしていり,溶結のし易さとの相関が推定される.阿蘇-4A火砕流堆積物の堆積後に2次流動の一種のレンズの絞り出しが観察される露頭でも残留磁化は1成分で,560℃以上で,レンズの絞り出しが完了していたことが推定される.阿蘇-3B火砕流堆積物の古地磁気方位は偏角が大きく東偏していることが明らかになった.
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