研究概要 |
高温の気固混相流として移動・堆積する大規模な火砕流堆積物には溶結度の変化が一般的で、非溶結から強溶結をへて二次流動を示すものまで、堆積時の温度の異なりが推定される。詳細な熱消磁実験に基づき、給源が等しく、岩相が異なる阿蘇火砕流堆積物の4回の噴火サイクルの火砕流堆積物のうち、高温堆積が推定される阿蘇-1・阿蘇-2A・阿蘇-2R・阿蘇-4A火砕流堆積物の強溶結部、比較的低温堆積が推定される阿蘇-3Bと堆積層厚が比較的薄いにも関わらず,基底部から強溶結を呈し,高温堆積が推定される阿蘇-4B火砕流堆積物の強溶結部からそれぞれ1〜3地点ずつ、合計12地点から104個の定方位試料を採取した。円筒形に整形した試料100〜590℃の温度について段階熱消磁実験を行い、交流消磁装置を用いて交流消磁実験を行い磁化の安定性を確認した。段階熱消磁実験の結果、阿蘇-2A・2R・3B・4A・4B火砕流堆積物はいずれもほぼ1成分の残留磁化を有し、560℃以上の温度で堆積したと考えられる。阿蘇-4B火砕流堆積物の残留磁化は他の阿蘇カルデラ起源の火砕流堆積物の残留磁化に比べて1桁大きな値を示す.阿蘇-1火砕流堆積物のうちレンズの絞り出しが観察される露頭では2成分の残留磁化が認められ、冷却しつつ、2次流動が進行したことが推定されたが,同じくレンズの絞り出しが観察される阿蘇-4A火砕流堆積物では1成分の残留強化を示し,レンズの絞り出しが磁化のブロッキング温度以上で完了していたことを示唆する。2次流動の著しい阿蘇-2Rについては1成分の磁化方向を示し、少なくとも2次流動は500℃以上で完了していたと考えられる.露頭ごとに平均磁化方位が異なることから露頭単位のスケールで岩体が形動・回転していたことが予想される.阿蘇-2A、阿蘇-2Rともにその古地磁気方向は深い伏角を示し,阿蘇-3Bは大きく東偏していることが明らかになった。
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