研究概要 |
継続の2年目となる今年度は,有機物熟成指標を検討する上で前提となる有機物含有量(total organic carbon:TOC)の分布を,日本各地の新第三系海成泥質岩について,文献のコンパイルを含めて取りまとめた.また,一方で,メチルフェナントレンなど特定の有機分子の他に,全有機物の炭素に対する水素の比(H/C ratio)の温度依存性を陸成有機物について検討した. 日本の新第三系海成泥質岩のTOCは,分析試料325個および文献値724個の合計1049個について解析したところ,その平均値は0.63%であった.このうち,珪質泥岩の平均値は1.27%と高く,泥岩は0.88%を示した また,全有機物の炭素に対する水素の比 (H/C ratio)は,天然の火砕流に含まれる炭化木片と加熱実験により,温度依存性を検討した.250〜700℃までの8つの定温で加熱、した炭化木片のH/C値は温度の増加とともに低くなった.各温度での速度定数をもとめ,アレニウスプロット(前指数因子:10^<13>l/s)を行ったところ,見かけの活性化エネルギーは加熱温度とともに増加し,250〜700℃までの間で,E=0.0902×Temp.+22.8(R^2=0.999)の関係が見出された.このことは,高温になるほどH/C比の温度依存性が高いことを示している.したがって,ケロジェン(とくに陸源のもの)が被熱した最高温度を,これらを基に推定することが可能となる.現在のところ誤差がかなりあるが,被熱プロセスがわかる場合には精度向上が可能である.
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