研究課題/領域番号 |
10640441
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
福地 龍郎 山口大学, 理学部, 講師 (90212183)
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研究分担者 |
今井 登 通産省工業技術院, 地質調査所・地殻化学部, 室長(研究職)
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キーワード | ESR / ICP-MS / 断層ガウジ / 粘土鉱物 / 摩擦熱 / 野島断層 / 断層解剖計画 / 兵庫県南部地震 |
研究概要 |
本研究課題を達成する目的で、平成10年度は、昨年度までに解析が進んでいる野島断層500m掘削コア試料のX線回折(XRD)及びESRによる詳細な解析を行った。XRD分析の結果、断層面近傍(0〜3mm)の断層ガウジでは粘土鉱物であるスメクタイトが増大し、カオリナイトが生成していることが判明した。カオリナイトは断層面から離れる(>6mm)と検出されなくなり、断層活動に伴う熱水作用で生成した可能性が高い。ESR解析では、野島断層の断層面近傍(0〜3mm)では温度が少なくとも300〜400℃まで上昇した証拠が得られており、熱源としては断層活動による摩擦熱が当初考えられたが、結晶水や吸着水を含んだ粘土鉱物から構成される断層ガウジの場合、摩擦係数は約0.2程度と見積もられ、ESR解析から推定される発熱量は得られないことがコンピュータ計算から判明した。また、地下深部の偏差応力により断層帯中の水が絞り出され、摩擦係数がより高くなると仮定し、ESR解析から推定される発熱量を実現しようとすると、断層面上では岩石の溶融温度を遥かに超える熱が発生し、断層面から幅3mm以内に位置する粘土鉱物はほとんど分解してしまうことになる。XRD分析からは、断層活動時には粘土鉱物の生成が促進された事が判明しているので、断層活動時の熱源は摩擦熱ではないと考えられる。これまでの全ての解析結果を総合すると、断層活動時には断層面沿いに地下から高温の熱水(あるいは水蒸気)が上昇し、断層面から幅約6mm程度まで染み込んだ可能性が指摘される。また、この熱水の温度を水の臨界温度(約374.2℃)程度であったと仮定すると、断層ガウジ中のESR信号の消滅様式を矛盾なく説明する事が可能となる。 平成10年度は、この他、500m掘削コアのγ線照射実験、750m掘削コアのX線及びICP分析を行っており、現在、分析結果を検討している最中である。
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