研究概要 |
本研究の目的は,世界的にも第四系の模式地として注目されている日本の房総半島とニュージーランドのワンガヌイ地方の層序について,高精度の時間軸にのせて対比をおこなうことである.本年度の研究としては,特に後期更新世,ワンガヌイ地方の海成段丘としては最も新しい低位の段丘に相当する,アイソトープステージ5以降の海成段丘と層序に関する現地調査とこれから得られる海水準変動の解明,およびいわゆるミランコピッチサイクルに対応する深海底の酸素同位体比曲線との対比を重点的におこなった.特に日本においては後期更新世についてはステージ5eの海成段丘,および5dの低海水準期の谷埋め堆積物の証拠が知られている宮崎平野の海成段丘の調査を,またステージ3の海成段丘の存在が予想される南房総の富浦町および館山市の調査をおこなった. 宮崎平野においては,段丘区分に関する新たな資料やステージ5dの谷埋め堆積物があるとされる通山浜層の中から年代決定の鍵となるテフラを新たな地点で発見し,採取するなど成果を得た.また南房総地域では,ステージ3に形成された可能性のある富浦2面,3面4面の海成段丘面のハンドオーガーによる試錐を数カ所においておこない,段丘面をおおう風成テフラ試料を採取,さらに露頭観察により新しくステージ3の海成段丘の堆積物を確認する成果を得た. なお本研究の補助金は追加交付により決定したもので調査期間が限られていたために,野外で得た試料の分析,資料の解析などは次年度におこなう予定である.
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