研究概要 |
メキシコ湾沿岸に発達するTecolutlaとNautla deltasの粒度組成およぴ鉱物組成から三角州堆積物の砂組成の特徴とそこから推定される堆積営力について検討した.2つのデルタで11の堆積環境から表層堆積物試料(197個)を採取し,算術平均,標準偏差および歪み度を求めた.その結果,1.2つのデルタの河川堆積物はどちらもよく似た粒度特性をもち,最も粗粒で分級が悪い.2.2つのデルタの全試料の算術平均と標準偏差の散布図は,よく似た傾向を示す.どちらのデルタでもより細粒型と粗粒型の2つのグループが求めらる.より細粒なグループには自然堤防,氾濫原など主に三角州平野面の堆積環境が含まれ,より粗粒グループには砂丘や海浜・砕波帯などの沿岸環境が認められる.下部エスチュアリーは,2つのグループにオーバーラップする.3.Tecolutlaの自然堤防と氾濫原堆積物はNautlaより粗粒で分級が悪い.Nautlaの下部エスチュアリーと砕波帯はTecolutlaより粗粒で顕著に分級が悪くなる.1.の結果は,2つのデルタの粒度分布の違いは河川供給物の違いではなく堆積過程を反映していることを示す.2.は波浪卓越型デルタの特性と考えられ,河川と沿岸の複合作用が認められる.3.の結果からは2つのデルタの堆積環境で卓越する堆積過程の違いが認められる.Tecolutla川はNautla川より年間平均流量や氾濫面積が約3倍で,メキシコで最も強力な河川である.したがって,より多量の土砂を運ひ氾濫時により多く粗粒砕屑物を自然堤防や氾濫原に残し,また,細粒物はより大きい湿地やマングローブなどにトラップされる.その結果,Tecolutlaの下部エスチュアリーに到達する砕屑物はより細粒で分級がよい粒度分布を示す.さらに,その大部分が下部エスチュアリーをバイパスして沖合いに運ばれる.一方Nautlaでは河川の影響が弱く,波浪による侵食と沿岸流による再堆積および下部エスチュアリーへの侵入がおこっている.これらのことは2つのアルタ地形の違いと表層堆積物の鉱物組成の変化からも支持される.(Okazaki et al.,2001)
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