研究概要 |
北海道の白亜系-第三系(K-T)境界付近の地層として,蝦夷累層群最上部の函淵層群,根室層群を対象として,堆積相解析,大型化石層序,化石相解析の基礎となる野外地質調査を8月に集中的に行った.北海道北部の中頓別地域を特に重点的に南部の穂別地域,北海道東部の厚岸地域は短期で実施した. 中頓別地域の函淵層群については,従来よりK-T境界の存在が知られているが,岩相層序,大型化石層序,微化石層序,古地磁気層序を統合するものはまだない.今回は広域な岩相層序,化石層序とその分布の追跡を目的とした.その結果,少なくとも2層準に厚い下部外浜〜内側陸棚の浅海成相の存在が確認でき,この地域のよい鍵層として追跡され,大きな複向斜構造に支配されて盆状に分布することがわかった.したがって,2つもしくは3つの堆積シーケンスがあることになる.また,マストリヒシアン階下部のInoceramus類が少なからず産し,さらにその上位に大型化石の産しない,地層が厚く発達することから,上部マストリヒシアンが存在することはほぼ間違いない.古第三系の存在についての追証は今のところ得られていない. 一方,穂別地域の函淵層群は約7回以上の類似する規模の堆積シーケンスが認められるが,マストリヒシアンの化石はまれである.少なくとも上部マストリヒシアンの存在は確認できない.今後はこれらのシーケンスが中頓別地域や大夕張地域とどう対比されるのかが課題である. 根室層群については下部マストリヒシアンに頻繁な"Inoceramus"kusiroensisが産し,古生物分類学的に重要であるので,形態学的,古生態学的な検討を行った.その結果,外部形態,靭帯構造から通常のInoceramus属ではなく,Inoceramus科の別属に含まれることがわかった.
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