研究概要 |
平成10〜13年の4年間で,北海道の白亜系-第三系(K/T)境界付近の地層として,中頓別,天塩中川,稚内,夕張,穂別地域に分布する蝦夷累層群最上部の函淵層群およびその相当層を対象として,堆積相解析,大型化石層序,化石相解析,花粉層序解析を実施した.また蝦夷層群との比較のため、同時代層である根室層群,那珂湊層群についても概要調査を行った.これらの成果の一覧や印刷済の論文別刷は成果報告書に収録した. 特に中頓別地域については,数年来にわたる精密な野外調査の結果,本邦の陸上露頭における白亜系カンパニアン〜マストリヒシアン階で最も精度の高い層序区分を確立できた.その成果は地質学雑誌に報告(安藤ほか,2001)し,続報を国際集会(白亜紀のアジアの炭素循環と生物多様性:中国ラサ)でも発表し,現在その論文集原稿を準備中である. 天塩中川地域では,中頓別地域よりも西方海岸側の浅海相の分布を高精度で把握し,上方に粗粒化・浅海化する5層のパラシーケンス(PS)を追跡することができた(高松・安藤,2001口頭発表).中川の北方延長に相当する稚内地域でも,単調な浅海砂岩相中に少なくとも4層のPSを確認できた(安藤・安藤,2002印刷中).中頓別地域の化石層序との比較により,中川地域の函淵層群はカンパニアン上部を主体としマストリヒシアンが認められない.一方,稚内ではカンパニアン上部に加え,マストリヒシアン上部までが存在することが判明した.中頓別で確認されたマストリヒシアン最上部や暁新統は,両地域とも不整合によって浸食されてしまっており,K/T境界付近の地層はまったく保存されていない.さらに,穂別地域は従来よりマストリヒシアン上部が確認されている地域であるが,マストリヒシアン最上部や暁新統の存在はまだ十分に立証できておらず,夕張地域の大夕張ダムにおけるボーリング・コアから発見された暁新統の連続性は不明である.現在,その鍵となる花粉化石処理を継続中で,かなり保存の良い試料が得られており,成果の報告は次年度以降になるが進展が期待される.
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