研究概要 |
近年,東赤道太平洋と大西洋海域から得られた深海底コアの石灰質ナンノ化石調査から,パナマ地峡の成立が約275万年前であることが明らかになった.このことに基づいて本年は秋田大学に保管中の深海底コアの中から,パナマ地峡の成立に伴う海流変化の影響を直接受けたと考えられる北西太平洋の地点883,882,881,577,北東太平洋の地点887,中部〜赤道太平洋の地点577,292,806,847,大西洋海域の地点999,1006,606,608,609,611,北極海域の地点911の深海底コアを選び出し,石灰質ナンノ化石用のプレパラート作成した.作成したプレパラートは,3000枚以上に達する.最初にこれらプレパラートのデータベースを作成したあと,石灰質ナンノ化石の調査に取りかかった.調査では,最初に詳細な地質年代の決定をし,引き続いて寒冷種Coccolithus pelagicusの産出頻度変化を抽出する.これらの結果から古海洋変動の解析を行うが,本年の調査では6地点の解析を終了した.この中間結果では,太平洋,大西洋,インド洋,それぞれにおいて寒冷種Coccolithus pelagicusの産出頻度変化が海域によって異なることが明かとなった.特に2.75Maを境とした太平洋と大西洋での極端な対立が注目されるが,これはパナマ地峡の成立と関連した海流変化に起因しているものと推定される.したがって,当初の予想通りCoccolithus pelagicusの産出頻度変化が,古海流の変遷を解明するうえで極めて有効であることが示唆された.
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