研究概要 |
北大西洋,北極海,赤道太平洋,中部〜北太平洋などで,深海底コアの採取が進められている.本研究ではこれら試料を使って石灰質ナンノ化石の解析を行い,その生物地理区の変遷から過去400万年の古海洋変動の復元を行った.最初に,カリフ海のバハマバンク,北極海域,パナマ地峡を挟む東西海域などから採取された試料の石灰質ナンノ化石調査から,急激な海水準の低下,地球の急激な寒冷化,およびパナマ地峡の成立がいずれも275万年前に発生したことを改めて提示した. これに基づいて,寒流系石灰質ナンノ化石Coccolithus pelagicusの地理的分布変化を詳細に解析した.その結果,275万年前を境に太平洋と大西洋で全く異なる群集変化をすることを明らかにした.これは,パナマ地峡の成立に伴い,大西洋を起源とする暖流が赤道大平洋に流入していたのが,パナマ地峡の成立に伴いその暖流が北大西洋に北上し,一方で太平洋では北カリフォルニアから南下する寒流が赤道太平洋に流入し始めたことを示唆している.また,大平洋海域のみで詳細にCoccolithus pelagicusの分布変化を解析した結果,以下のような変化が判明した.すなわち,北緯40度付近を境に明瞭な生物地理区境界が存在し,それより高緯度海域では寒流系種Coccolithus pelagicusの多産で特徴付けられる.ただし,低緯度海域でも2.78Ma以降でも同種の増加があり,汎地球的な気候変動を示唆している.この生物地理区境界は寒冷化が発生した2.78Maを境に若干の南下が認められるものの,大きな変化ではない.このことは気候変動と海流変化との関連から興味深い結果と言える.
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