研究概要 |
平成10年度に,これまで未調査であった中央北海道中頓別地域の白亜系最上部層を中心に古地磁気試料を採取した.調査ルートは同地域の菊水川・ウツナイ川,およびそれらの支流沿いの3ルートである.これらの大部分は正帯磁を示し,ウツナイ川の一部の層準のみが逆帯磁を示す.これらの研究と並行して,南サハリン上部白亜系の古地磁気層序・大型化石層序の再検討を行い,蝦夷層群ばかりでなく北太平洋域上部白亜系の相互比較を可能とする古地磁気模式層序を確立することができた.この模式層序と比較すると,中頓別地域の正帯磁は,Campanian階/Maastrichtian階境界のPolarity Chron32nに対比できる.一方,ウツナイ川ルートから見いだされた厚い逆帯磁層は,Polarity Chron32n前後の逆磁極期に相当する可能性も高いが,古第三紀以降の再磁化の可能性も否定できない.本調査地域の南に位置する古丹別地域の古第三系の大半が,同様の古地磁気偏角をもつ逆帯磁を示すだけに,今後の更なる検討が必要である.このほか,南サハリンから北海道に至る地域の新生代テクトニクスを明らかにするため,同地域の第三系堆積岩類を対象とした古地磁気学的研究も行った.その結果,後期中新世以降,同地域が鉛直軸の回りに30〜40度の時計回り運動を経たことが分かった.さらに,九州天草地域の白亜系,愛知県犬山地域の三畳系を対象とした研究により,西南日本の古地磁気極移動曲線を確立するとともに,異地性地塊の形成場所や衝突・付加過程を明らかにした.
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