研究概要 |
本年度,秋吉帯の石炭-ペルム系秋吉石灰岩層群及び三宝山帯の上部トリアス系神瀬層群石灰岩を対象として,それぞれ数日間の野外調査を行った.野外調査では,石灰岩の岩相,生相,堆積構造等の観察を行い,とくに秋吉石灰岩層群においては,上部石炭系〜下部ペルム系に興味深い岩相・生相が見出されたので組織的な試料採取を行った.室内に持ち帰った石灰岩試料の代表的な試料の大型岩石薄片または研磨面を作成し,鏡下観察を行い,岩相・生相解析を行うと同時に,本研究の課題であるシアノバクテリアによる生物構築構造の観察・記載を行った.また重要と思われる試料の薄片写真撮影も試みた.以上の研究から明らかになった点を以下に要約した. 1. 今回検討した秋吉石灰岩層群は上部石炭系潮下帯相と下部ペルム系期間帯(一部潮上帯)相に区分できる. 2. シアノバクテリアを主とし,固着性有孔虫,石灰藻類などからなるバウンドストーン及び生物構築構造は,今回検討した秋吉石灰岩層群のなかでは,下部ペルム系下部〜上部に多く見られた. 3. 秋吉石灰岩層群での検討から,石炭紀新世以降の海山型石灰岩の形成に対するシアノバクテリア等の寄与が大きいことが明らかになった.シアノバクテリアの繁栄が時代に依存するものか,環境にコントロールされたものかの問題が生じたので,次年度以降の検討課題とした. 4. 神瀬石灰岩から,シアノバクテリアバウンドストーンを見出したほか,シアノバクテリアによる小規模な被覆・連結構造を発見,記載した.シアノバクテリア及び生物構築構造の記載はは神瀬石灰岩からは最初の報告例と思われる. 5. 神瀬石灰岩の形成にはサンゴ,海綿などの大型生物のほかに,シアノバクテリアが大きく関与した可能性が指摘できる.この点をより明確にするために次年度以降,さらに事例の蓄積に努めたい.
|