研究概要 |
本年度は,九州の秩父帯の上部石炭系矢山岳石灰岩,上部ペルム系球磨層および三宝山帯上部トリアス系神瀬層群石灰岩を中心にしてそれぞれ数日〜1週間程度の野外調査を行った.同時に試料採取も行い,室内で大型薄片、研磨面等を作成,鏡下観察ならびに今年度新規に設置した撮影装置を用いた写真撮影による資料の蓄積に努めた。 矢山岳石灰岩の調査では紡錘虫化石研究者と共同して,新たに見出された連続層序断面について綿密な試料採集を行った.その結果,化石層序と岩相変化の詳細な資料をもとにしたシアノバクテリア類,石灰藻類の記載を現在進めている.検討した断面は秋吉石灰岩層群において重点的に研究を進めている年代領域に近く,両石灰岩のシアノバクテリア等の比較は次年度の重要な課題としたい. 球磨層石灰岩の調査では産状の検討に力を注ぎ,石灰岩がスランプや重力流堆積物として砕屑岩中に移動した砕屑性石灰岩であるとの結論に達した.同時にわが国では例が少ない上部ペルム系石灰岩の構成生物を解明するための基礎的資料および岩石試料を得ることが出来た.岩相と生相はもっか解析中である.この成果の一部は,日本地質学会第106年年会(名古屋大学)で公表した. 以上の他,昨年来より行ってきた秋吉石灰岩層群におけるシアノバクテリアおよび古環境変化に関する研究の成果の一部をそれぞれ,「化石クニダリア」(仙台市)と「石炭系・ペルム系に関する会議」(カナダ・カルガリー市)(ともに国際会議)において公表した.
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