研究概要 |
本研究は,過去の地球の温暖期に環境や生物相がどのように変化したか2つの温暖期を対象に総括した. 一つは,白亜紀の時期で過去の地球史においても二酸化炭素濃度が非常に高く,過去1億年間で最も温暖化が進んだ時期として知られている.特に,120〜90Maの間には数回の無酸素事件が記録されている.北海道でも,テチス地域の群集を構成する至準種をアルビアンからセノマニアンの地層に認めることができる.すなわち,北太平洋でも温暖化の進行にともない熱帯・亜熱帯種の分布が極地方へ拡大したことがわかる.また,オルビトリナ石灰岩などからなる生物礁の存在もこれを裏付ける.しかし,セノマニアンの後期以降では,熱帯・亜熱帯の気候を示唆する属の産出が減少し始め,やや寒冷な気候へと移化するものと考えられる.底生有孔虫に関しては,OAE IIの無酸素事件に対応して好気性の種群が絶滅している.この時期の温暖化の原因としてはスーパープリュームとの関連が指摘されている. 新生代において,最も顕著な温暖化は最後期暁新世から初期始新世かけて生じた.この時期にも底生有孔虫の多くが,暁新世/始新世境界で衰退・絶滅する.浮遊性有孔虫に関しては,境界では顕著な絶滅はみられないが,その直下で中〜小規模程度の絶滅がある.浮遊性種では熱帯・亜熱帯種の高緯度地域への拡大のほうが特徴的にみられる.熱帯域の代表であるMorozovella属の分布が広がっている.この時期の温暖化も地球内部に原因があるとされ,大西洋地域の火山活動の激化,熱水活動の激化が挙げられている.また,炭素の同位体比のスパイクを説明するためにガスハイドレート説,ヒマラヤの衝突説が提案されている.
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