研究概要 |
古環境復原での生物指標の一つとして過鞭毛藻シストを用いる際の渦鞭毛藻シスト保存特性を理解するために,出現記録のあるプランクトンと表層堆積物中の保存シストとの対応を,三重県的矢湾他で調査する. 今年度の成果は次の通りである. 1. 的矢湾の2地点で手動式ピストンコアラーで柱状試料(St.1;コア長59cm,St.2;69cm)を採取するとともに,また7地点でTFOコアラーにより表層堆積物試料を採取した. 2. ^<210>Pb法による平均堆積速度はSt.1;0.5cm/年,St.2;0.41cm/年,含水率はSt.1では78〜45%,St.2では82〜45%であった.いずれの地点でもコア試料の最下部は約100年前の年代を示すと推察された. 3. コアや表層堆積物の渦鞭毛藻シスト分析は継続中であるが,これまでに確認された種は,Spiniferites bulloideus,Scrippsiella trochoidea,Protoperidinium spp.などであった. 4. プランクトン試料は3地点でネット採集および採水を通して行った.検鏡の結果,Alexandrium sp.,Protoperidinium spp.などの出現が確認された. 5. 過去数十年のプランクトン試料および海洋環境資料の提供を受けた.その中には130種余りの有殻渦鞭毛藻が記録されており,これまでの研究によってうち31種のシストの存在が知られていることが判明した. 来年度はシスト分析を継続し,プランクトン出現記録・海洋環境資料との比較・検討を行ってシストの保存性,さらにシスト群集組成変化から水質環境変化を明らかにする予定である.
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