研究概要 |
1.哺乳動物化石の分類および系統関係 Higotheriumは裂歯目に属する最も派生的な属の一つで、北米のTrogosus,Tillodonおよび中国のKuanchuaniusと、中国から知られているChungchieniaとの間に位置する。また、cf.Trogosus sp.AとBとは、北米のトロゴサス類と密接な類縁関係を示唆し、Higotheriumと東アジアで共存していた事を示す。トロゴサス亜科は恐らくアジアに起源し、ベーリング陸橋を経由した北米への放散は、既に前期始新世の初期以前から始まっていたことが示唆される。Asiocoryphodoncf. conicusはほぼ完全な頭骨と下顎骨、そして肢骨の一部を含む比較的に若い個体で、極めて大きな13/3を持つ。その特徴的な切歯の形態はコリフォドン科に属する他の属には全く見られず、Asiocoryphodon固有である。Coryphodontidae gen et sp.indet.は比較検討の結果、CoryphodonないしAsiocoryphodonに属する可能性が高い。Orientolophus sp.はDP4/とM1/を伴う左上顎骨で、イセクトローフス科の極めて原始的な種である。この種は中国のO.hengdongenesisに類似するが、それより派生的な種と考えられる。 2 始新世の哺乳類化石に基づく年代学への貢献 赤崎層下限の地質時代はいまだはっきりしていないが、上下の層序関係からその上限は中期始新世の初期と考えられ、下限は始新世前期に至る可能性がある。赤崎哺乳動物群は、中国・北米産の化石との比較から、北米のBridgerian初期と、中国のBumbanian後期およびArshantan初期にかけての分類と類似する。これらの外国産の関連する哺乳類化石から想定される地質時代と、層序的な関係から考察された赤崎層の地質時代とはほとんど矛盾しない。
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