(1)採集活動:北海道上部白亜系蝦夷層群のノジュル中より多くの鉱化植物化石を採集した。鉱化化石には細胞組織がよく保存されているため、標本の切断・切断面の研磨、触刻(etching)、およびピールフィルムの作成により、細胞組織・構造の詳細を入手することが可能である。 (2)これらのうち、すでに論文として発表したものは、ベネチテス目の雌性繁殖器官およびもくれん目植物の果実で、前者は形態属のBennetticarpusの新種、後者は新形態属Keraocarponに属し、2新種が記載された。いずれも白亜紀中期の植物に新知見を提供したものである。 (3)以上のほか、下記の分類群が認識されており、近く論文として公開の予定である。 1)ベネチテス目の幹部化石 2)所属不明の大型の果実化石 3)鱗片葉をつける球果類の枝条化石(4種) (4)蝦夷層群の鉱化化石は、Stopes and Fujii(1910)以来散発的な研究が行われてきた。1960年代から活発な研究が進められている。これらの化石標本はいずれも断片化しているため、植物体の全容を明らかにすることが困難ではあるが、現在までに、得られた知識によると、ベネチテス目および球果目に属する分類群が多く、また球果目植物では鱗片葉をつける枝条が多産することから、この植物群は、日本の太平洋側、南沿岸州および中国揚子江以南に分布するジュラ紀後期〜白亜期前期の領石型植物群の後裔に相当するものと考えられる。領石型植物群の生育地は年間に乾燥季のある当時の熱〜亜熱帯地域である。
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