白鳳丸KH93-3航海でインド洋海嶺三重点付近からドレッジで得られた約2000kgの海底岩石(半深成岩と噴出岩を含む)中には、変質度に関する差異が認められた。特に南西インド洋海嶺東端の、海嶺三重点付近の水深3000mから5050mに至る急崖には、高度差約1500mに渡り、海洋地殻の断面が露出している。この急崖からは新鮮な黒色の玄武岩から褐色や緑色に変質した玄武岩〜ドレライト等約1000個の玄武岩が1回のドレッジにより採集されている。 本年度は、変質程度の異なるこれらの岩石を用いて、中央海嶺での熱水変質や海底での低温風化に伴う元素の拠動を明らかにするために、主成分および微量成分元素の全岩化学分析を中心に研究を行った。岩石はA)ほぼ新鮮な玄武岩、B)粘土鉱物を含む褐色に変質した玄武岩、C)緑泥岩や硫化物を含む緑色に変質した玄武岩やドレライトに区分できる。グループAの岩石は中央海嶺玄武岩(MORB)の組成を示す。グループBの岩石は、グループAの岩石に比べてK、Rb、Uに富み、低温下での海底風化作用に起固すると考えられる。一方グループCの岩石はMn、Mg、Na、CuとZnに富みCa、K、Co、Rb、SrとBaに乏しいという地球化学的特色を示す。前者は海嶺での熱水からのべイス・メタルの付加、後者は中央海嶺での海洋地殻内の海水循環に由来するクロライト化やアルバイト化といった熱水変質作用に起固すると考えられる。 上記のような玄武岩の変質に関する地球化学的特徴は、国際深海掘削計画(IPOD/ODP)の深さ2000mに至る掘削孔504B中の、枕状溶岩帯から漸移帯を経てシート状岩脈帯までの岩石に見られる、特色ある地球化学的変化に相当していると言っても過言ではない。
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