研究概要 |
今年度は以下の2つの問題について焦点を絞り研究を行った。 1) 石英-コーサイト転移のカイネティクスの研究を4GPa、650,750,850℃の条件で試料急冷法を用いて行った。試料は1mm角の立方体に切り出した単結晶を使い、回収試料の薄片を製作、偏光顕微鏡で観察した。コーサイトは出発試料の表面でのみ核形成し、内部に向かって成長しており、成長速度に異方性は認められなかった。コーサイト相が形成したリムの厚さの時間変化で見積もった成長速度は明らかな温度依存性を示し、活性化エネルギー約80KJ/molを得た。この値は以前、同様の温度圧力条件で粉末試料に対して求めた値(約200KJ/mol)の半分以下であり、カイネティクスへのサイズ効果を示唆し、興味深い。粉末、単結晶の試料を問わず、核形成は転移の極初期で完了しており、相転移速度がコーサイト相の成長律速であることから、活性化エネルギーの違いは成長のメカニズムの違いを反映している可能性がある。 2) Pb○_2についてルチル型からα-PbO_2型への相転移のカイネティクスを例にとり、実験パスの違いが与える影響を研究した。すなわち最終温度圧力条件に至るパスを温度→圧力の順とするか、圧力→温度の順とするかで相転移速度に変化が見られるかを検討した。実験は、外熱式ヒーターを組み込んだダイヤモンドアンビルセルを用い、湾曲型PSD計測器を使った時分割X線その場観察で行った。結果は先に昇圧し、その後昇温した方が相転移が優位に早く進行することを示した。この結果は、昇圧過程で歪みが導入される、あるいは、微小な核がすでにできていることを示唆する結果と考えられる。
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