(1)粉末と単結晶を使った高圧回収実験から、石英-コーサイト転移のカイネティクスに結晶粒径効果がある可能性が示唆され、粒径が大きいほど転移の活性化エネルギーが低くなる傾向を得た。また、静水圧下では核生成は粒表面のみでしか起こらないのに対し、差応力下では粒内部での核生成が観察され、静水圧性が核生成に影響を及ぼすことが認められた。またこの相転移が核生成・成長のメカニズムで起こっていることが回収実験、その場観察実験両方から明らかになった。しかし核生成は相転移の極初期に完了しており、核生成が成長を律速する過程を観測することは困難であった。そこでSPring8の強力な放射光を使って1ステップ15秒程度の短時間での時分割X線回折実験を高圧高温下で行い、その結果、初めて核生成の律速していると予想される相転移の極初期の様子をとらえることに成功した。1 (2)放射光とを使った高圧粉末X線回折実験の結果にRietveld法を適用して、格子定数の圧力変化からのみではなく原子レベルでの圧縮挙動を調べることによりCa(OH)_2とMg(OH)_2の圧縮挙動の類似点と相違点を明らかにした。圧縮初期では両者とも八面体層間が著しく圧縮されるが、層間の酸素-酸素間距離が2.75Åに達する約10GPaでCa(OH)_2は非晶質化を起こし、Mg(OH)_2は圧縮メカニズムが酸素パッキングに支配されるメカニズムに変化し、著しく異方的な圧縮挙動が等方的に近くなることが明らかになった。この挙動の違いはMgとCaの電気陰性度の違いが形成される水素結合の強度に影響していることが原因である可能性が示唆された。
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