研究概要 |
徳島県貞光地域および兵庫県三原郡南淡町沼島に分布する三波川変成岩類、ニュージーランドのハーストシスト帯について研究を行った。三波川変成帯では、卓越する東西性のストレッチング・リニエーションの時期について岩石学的解析を行い、以下の結論を得た。 (1)沼島では、線構造の方位に引き伸ばされブーディン構造をなす曹長石斑状変晶の斑状変晶のCa量が縁部で最大になること、藍閃石と黒雲母が共生し、藍閃石が引き伸ばされた割れ目に黒雲母が生じていることから、変形は最高温度期に最大になり、以降急激な上昇が起こった、(2)貞光地域南部に露出する砂質片岩には、東西性のストレッチング・リニエーションが顕著に観察される一方で、南北性のストレッチング・リニエーションも同時に認められる。多くの場合,南北性の線構造は,東西性の線構造形成と同時に起こったと考えられる南北方向の圧縮を受けており,南北性の線構造が東西性線構造に先行する可能性が強く示唆され、南北性のストレッチング・リニエーションは、変成帯の上昇に先立つプレートの沈み込みによって形成された可能性が高い。 ニュージーランド・ハーストシスト帯では、変成作用の性質について調べた。ハウエア湖周辺の変成岩類は、南半部の緑泥石帯と北半部のザクロ石帯に分けることができた。緑泥石帯では斜長石組成が曹長石であるが、ザクロ石帯で灰曹長石が出現する。それに対応して緑簾石の量比が著しく減少し、緑簾石の分解が灰曹長石の出現に関与していることが明らかになった。従来、緑泥石帯とザクロ石帯の間に黒雲母帯があるとされてきたが、今回黒雲母帯を区別することができず、あったとしてもごく狭いと思われる。このことは、ニュージーランドの圧力条件がスコティッシュ・ハイランドより高く、P-T図上でガーネットと黒雲母の生成曲線の交点近傍に位置することを示唆している。変成帯の上昇に関しては高変成度部は北方のアルパイン断層の影響が大きく関与しており、予想より複雑な上昇過程を経たものと思われる。
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