研究概要 |
変形スピネルβ相の弾性率の温度微係数,スピネル単結晶の弾性率とその温度変化を球共振法にて測定しまた石英ガラスについての高圧共振法の試行などを行った. 1. 鉄を含む変形スピネル多結晶体を合成した(密度ρ=3.6081 Mg/m-3).この試料に球共振法RSTを適用し,弾性率を得た.25℃では,体積弾性率KS=165.698GPa,KT-164.452,剛性率μ=105.661,それらの温度微分係数KS^*(=∂KS/∂T)=-0.0160 GPa/K,KT^*=-0.0222,μ^*=-0.0124を得た.熱膨張データ(鈴木他,1980),比熱データ(渡辺,1982)を用いると非調和パラメータとして,γ=1.22,δS=4.64,δT=6.48を得る.これまでに報告されている圧力微分係数K'=∂K/∂P=4.25とμ=∂μ/∂P=1.45を用いると,深度400km相当の条件下でのオリビンモデルの速度不連続変化Δvp=0.72km/s,Δvs=0.47km/sを得た. 2. 密度3.5846 Mg/m-3の単結晶スピネルMgA12O4試料に球共振法を適用し高温での物理特性を解明した.23モードの1200Kまでの測定から2次相転移による異常を904K(=Tr)で周波数変化で検出した.この異常は弾性率Csに約2%の影響を与え,γおよびδ'sはその異常のために不連続な変化を示す.この転移温度は圧力とともに増加するので,地球内部での力学特性に影響を与える可能性がある. 3. 石英ガラス球形試料の弾性率をFT-RSTにより常温でヘリウムによるガス圧200MPa(2kbar)まで測定した.複数のT・Sモードの周波数の圧力シフトからGO'=-3.5,KO'=-6.0を得,これらは既報の値とよく一致する.これによりFT-RSTが圧力勾配の測定にも適用できることを実証できた.
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