研究概要 |
従来,共振法の高温測定において用いられてきたバッファー法を材質・形態の面からさらに改良した(横置き型バッファー法).これを「球」共振法に応用することにより,一層精度の良い弾性率測定を可能とした.そして,以下の結果を得た. 1.前回の測定と同一のスピネルMgAl204単結晶試料について制御された温度管理のもとに弾性率の温度変化の再測定および,通常の物質には見られない等温条件下での弾性率の時間変化を測定した.その結果,弾性率の温度変化(ヒステリシスと屈曲点)と無秩序度xとの関係を明らかにし,スピネル結晶内での秩序無秩序転移の活性化エネルギーを290kJ/molと見積もった.xは剪断弾性率Cs(=(C11-C12)/2)に最も強い影響を与え,平衡温度500〜1400Kに相当するx=0.0〜0.3までの変化に対してCsは約10%と大きく増加することを見出した.体積弾性率Ksは同区間で約1.5%の減少,もう一つの剪断弾性率C44については約0.1%の変化を見た. 2.レーザー光源として重要な物質YAGの合成単結晶試料について,これまでより一層広い温度範囲300〜1100Kでの弾性率の精密な測定を行った.その結果,この物質は共振周波数において0.1%程度の異方性示すが,実際には立方晶系の取り扱いが可能であること,体積弾性率K_Sはもとより他の各弾性率も共に,修正ウオッチマン式(Anderson,1966)に各弾性率の誤差の範囲内で精密に一致しており,弾性率の面からはDebyeモデルによく適合することを期待させる結果を得た.但し,等温体積弾性率K_Tは例外的である. 3.合成単結晶ルチル球について温度300〜700Kの範囲で弾性率の精密な測定を行い,従来より一層の精度の向上を見た.さらに,内部摩擦が温度変化を示し,450K付近で極大値を持つことを確認した.結晶内振動モードが顕著に弾性率に影響することを示すものである.
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