研究概要 |
1.結晶構造、結晶性、アミノ酸濃度 13種類の生体構成アミノ酸を共存させ,50℃のアラゴナイト形成条件下で炭酸カルシウムを結晶成長させた。アミノ酸無添加試料の結晶構造は,カルサイトとアラゴナイトともに約50%の比率を示したが,L-Ala(非極性アミノ酸),Gly,L-Gln(非荷電極性アミノ酸),L-Asp,L-Glu(酸性アミノ酸)を共存させた場合,アラゴナイト比が75〜90%程度に上昇した。また,すべての試料中にバテライトは検出されなかった。 熱平衡状態で無いため結晶中へのアミノ酸分配率は一定しないが,Gly,L-Asn,L-Thr,L-Asp,L-Gluは,0.03〜0.14mol%の高い分配率を示した。また,同種類のアミノ酸では結晶中のアミノ酸濃度が高いほどアラゴナイト比率が高くなり,取り込まれたアミノ酸はアラゴナイト形成を促進することがわかった。 SEM像から,カルサイト結晶は数10μmの滑らかな表面を持つ菱面体であった。一方,アラゴナイト結晶の粒径は10μmであり、その構造は1×5μmの針状結晶が束になって2方向へ延びたユニークな特徴を示した。 2.再結晶過程と相転位 結晶熟成時間とともに,アラゴナイトはカルサイトに再結晶し,試料中のアミノ酸濃度も減少した.DSC測定では,400℃付近にアラゴナイトからカルサイトヘの相転移に伴う発熱ピークが出現した.Aspドープ以外の試料では,無添加試料よりも大きい相転移エンタルピーを示した. 3.炭酸カルシウムとアミノ酸の結合モデル MOPAC/PM3法,ZINDO法による,アミノ酸と炭酸カルシウムの分子軌道および静電ポテンシャルの理論計算と実験結果から,炭酸カルシウムとアミノ酸の結合形成のモデルを提案した。
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