研究概要 |
マントル内410km地震波不連続面は、α-(Mg,Fe)_2SiO_4からβ-(Mg,Fe)_2SiO_4への相転移によると考えられている。平成11年度は、分子動力学(MD)法を用いた計算機シミュレーションにより、α-及びβ-Mg_2SiO_4の常温常圧から高温高圧に至る構造とP及びS地震波速度を高精度で求めること、及び得られたシミュレーション結果をこれら2相についての既存の構造・物性データ、及び地震波観測データと比較検討することにより、410km地震波不連続面の構造の詳細を求めることを試みた。 410km不連続面における地震波速度の変化(増加)は、P及びS波のいずれについても、約4-5%と報告されている。410km不連続面を想定した温度圧力条件下(温度約1700K、圧力13.7GPa)における、α相からβ相への転移に伴う地震波速度変化のMD値は、P及びS波のいずれにおいても約10-12%であることを見出した。このことは、410km不連続面における(Mg,Fe)_2SiO_4成分の割合が最大約50%であることを示すものである。一方、同様な検討を密度の不連続変化についても行った結果、同不連続面における(Mg,Fe)_2SiO_4成分の割合は約90%にも達することが明らかになった。この結果は、410km不連続面が、α-(Mg,Fe)_2SiO_4からβ相への転移では説明できない、或いは410km不連続面における密度変化についての地震波データ(PREM)に大きな誤差が含まれることを示すものである。
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