研究概要 |
本年度は、主に三重大学勢水丸SE00-06航海(2000.6.13-6.21)と東京大学淡青丸KT00-13航海(2000.9.15-9.22)の2回の現場観測を実施した。観測点(29°30′N,135°15′E)において、PERALSペクトロメータを用いてTh-234の海水中濃度を決定した。 6月の航海において、リン酸は0.05μM以上が200m水柱で存在するが、硝酸はほぼ枯渇していた。亜表層クロロフィルa極大が存在し、オクトパスによる蛍光光度分布とよく一致した。Th-234の鉛直分布は、ほぼ親核種のウランと放射平衡にあり、この海域の低い生物生産を反映する結果となった。しかしながら、クロロフィルa極大層に呼応するように有意なTh-234不足が認められた。粒子態Th-234はクロロフィルa極大の上層で高い値(約0.6dpm/L)を示した。また、この層では全Th-234濃度が僅かではあるがウラン濃度以上に存在する傾向が見て取れるので、上層から運ばれた物質の再生によって付加された部分の存在が予想された。貧栄養海域有光層での栄養塩補給として、現場上層から沈降してきた有機物質の分解再生が重要であると示唆された。 9月の航海では、6月に比較してさらに強く密度躍層が発達していた。混合層水温は、6月よりも約2-3℃高かった。この時、リン酸は約50mまでは0である一方、硝酸はほぼ全層に渡って存在していた。クロロフィルa濃度は、6月の観測同様に亜表層極大を持つが、その値は約0.3μg/Lと小さく半分以下であった。Th-234は、6月同様あまり大きな非平衡は見られず、ほぼウランと放射平衡にあったが、クロロフィルaの亜表層極大と一致して、Th-234の不足がここでも認められた。また、この亜表層では粒子態Th-234濃度が低く、この部分が除去されていることを示した。
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