1. 岩石の化学風化過程:地質調査所製の岩石標準試料の玄武岩(JB-1a)、長石(JF-1)、はんれい岩(JGb-1)、ダナイト(JP-1)の4種類の岩石粉末を10mM HNO_3溶液にて処理し、溶出した元素を原子吸光法とICP-AES法を用いて、岩石表面元素組成をXPSにより分析した。組成の変化はXPSで調べられる表面組成の変化の方が溶液への溶出率よりも大きな変化としてとらえられた。JF-1の20時間処理では主要元素のK、Na、Alの溶出は化学量論比的であり、表面に平均数10nmのSiに富む溶脱層が形成されることが示された。この溶脱層は他の岩石試料についても程度の差はあれ酸処理により形成されていることが分かった。岩石の少量成分元素の表面濃度とその酸処理による変化に特徴的な挙動が見られた。 2. 湖沼堆積物の表面化学組成:中性湖沼である摩周湖の堆積物粒子のXPSにより分析した(表面層の)Al/Si比はコア試料の深さ方向にわたって一定で1に近いのに対し、酸性河川水の流入あるいは導入のあった田沢湖、屈斜路湖ではそれぞれ特徴ある変化を示すことを見いだした。田沢湖コア試料では酸性水の導入が開始された時期に対応する深さからこの比に顕著な増加が見られ、屈斜路湖では酸性河川の流入位置との関係によって比が大きく変化することが示された。屈斜路湖堆積物の選択的抽出法による分析結果からAl/Si比が塩酸ヒドロキシルアミン可抽出態(水和酸化物態)に相関することが分かった。すなわち堆積物粒子表面層のAl濃度が湖水中のAlの挙動を密接に反映していることが示された。 3. 酸性化土壌中の元素分布:施肥条件の相違により酸性化の程度のことなる土壌の層位別に平均および粒子表面化学組成の予備的分析を開始し、条件を反映して組成が変化することが分かった。
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