研究課題/領域番号 |
10640477
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
相馬 光之 静岡県立大学, 環境科学研究所, 教授 (00011552)
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研究分担者 |
谷 幸則 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助手 (10285190)
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キーワード | 酸性化 / 化学風化 / 鉱物 / 岩石 / 土壌 / 堆積物 / アルミニウム / X線光電子分光(XPS) |
研究概要 |
1.鉱物の酸による化学風化:岩石からの元素の酸溶出(昨年度)に関係の深い鉱物である長石(K-、Na-、Ca-)とかんらん石(Mg-、Fe-)粉末の10mM硝酸、5mM硫酸による元素の溶出とX線光電子分光法(XPS)で測定される粒子表面組成の変化を調べた。一般に溶出に伴ってSi濃度が相対的に高くなった表面層が形成されるが、最も溶解しやすいCa-長石では顕著ではなかった。Fe-かんらん石ではXPSのSi2s、01sのスペクトルの変化から、表面にSiO_4単位が3次元的に重合したシリカ(SiO_2)層が生ずると考えられるが、他鉱物の場合は、シリカ層の形成は必ずしも明瞭ではなく、表面層のSiの状態が鉱物によって異なる可能性も示唆された。 溶解の遅いK-長石やNa-長石の反応の初期にはSiの溶出量がAlやK、Naにくらべて鉱物の化学量論比より少なくSiに富化した表面層の形成に対応した。反応開始後25日以降の溶出成分の組成はほぼ化学量論比に等しく、反応は定常状態に達していることを示した。この段階で溶出量に酸による違いはなかったが、Na-長石の反応の初期に硫酸による溶出が硝酸にくらべ速かった。この傾向はFe-かんらん石、Mg-かんらん石ではより明瞭に見られた。硫酸イオンとMg、Feの錯形成能に関係すると考えられた。 2.酸性化水・土壌環境の元素動態:茶園土壌の窒素施肥による酸性化に関連して、自然植生下(対照区)の土壌層の元素組成、粒子表面化学組成を茶園の施肥区土壌と比較した。茶園土壌のpHはCa多肥区でも対照区より低く、元素の分布は酸性化の効果と施肥による供給の2つの面から理解できることが示唆された。例えばNi、Mn、Coなどの塩基性岩由来と考えられる元素は対照区で高く、Kは平均組成としては大きな違いはないが、対照区の粒子表面濃度は施肥区にくらべて顕著に低いことが見出された。茶園地帯の谷川水のpHは雨期に低下するが、湧水源から流下とともに起こるpHと溶存元素濃度に特徴的変化を見出した。
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