研究概要 |
有機物解析による古環境を明らかにする際に,重要な課題は有機物が保存されているを仮定している。したがって,還元環境にある湖底堆積物は解析試料として適している。これまでに,得られた試料を使って分析していると,有機物キャラクテリゼーションからはこの有機物が陸起源でない解釈が得られ,安定同位体から陸起源の解釈となった。そこで,太湖から採取した堆積有機物が堆積環境で変遷したのか,または安定同位体のこれまでの情報とことなる有機物が存在するのかに焦点を絞り課題が明らかにすることによって,湖底に堆積された有機物の起源から堆積当時の環境が明確に推定される。 平成11年度は,採取した三柱状試料のうち平成10年度に有機物分析としてフェノール酸等を分析した一柱状試料(1m80cm長)を13セクションに分けて,各セクションを安定同位体分析に焦点を絞り,炭素及び窒素の安定同位体比を測定し,δ^<13>Cおよびδ^<15>Nの柱状プロファイルを明らかにした。同時に,対照として太湖周辺土壌の陸起源の一柱状試料(3m50cm長)を41セクションを同様にして測定し,δ^<13>Cおよびδ^<15>Nの柱状プロファイルを明らかにした。これらの所見は以下の通りである:自生性有機物炭素は湖底堆積物のそれほど寄与していないように見受けられた;柱状堆積物の有機物多含セクションの有機物は陸域森林生態系の一次生産物を起源としているように思われた;土壌プロファイルの最下層で,炭素のδ値が上層部よりすべて高い値をしめしたのは,C4植物の影響を受けたと暗示される結果を得た。これらのことから,有機物多含層の湖底堆積物の有機物は陸起源で,堆積中の続成作用により有機物が変遷したと考えた。今後の課題は,その有機物の続成過程を解明することである。
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