申請者は、最近、パルスレーザーによる分子の量子状態間遷移の制御に関するフィードバック最適化理論を発表した。1自由度の単分子反応へ適用し、理論の有効性を検証した。本研究の目的は、この様な反応ダイナミクスの量子制御基礎的研究の成果をふまえて、多次元系反応ダイナミクスの量子制御理論を構築することにある。本平成10年度に於ては、多次元自由度系の扱いのひとつとして、核を古典的な運動方程式に従うとしてフィードバック最適化制御方程式を解くことにした。その制御する電場を設計するためのアルゴリズムを開発した。それによって、核の位置と運動量の交換関係を気にすることがなくなり、原理的には、多自由度ポテンシャル上での核の組み替えを容易に評価することが可能になる。その結果、制御方程式に用いる制御パラメータとして、核の運動エネルギーを用いることが可能になり、反応を代表点がポテンシャル曲面上を運動するものと捉えることが出来る。2自由度系の反応制御の具体的な計算を行ない、開発したアルゴリズムの検証を行なった。得られた結果はアルゴリズムが正しいことを示している。古典的な方法ではあるが質量が軽い系でポテンシャルが束縛状態から反応が誘起される場合、制御レーザ場は共鳴中間状態としてあたかも量子化された中間状態を経由して反応が進行するような一連の電場の振動数を持つことが新たに見出された。この結果は今年度に開発した制御方法が量子系に対しても適用可能であることを示唆していて非常に興味深い。現在その結果を論文として投稿準備中である。
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