研究概要 |
本研究の目的は、我々のこれまでの量子制御研究の成果をふまえて、多次元系反応ダイナミクスの量子制御理論を構築することであった。本成果研究報告書の研究発表のところに示されているように、本研究の主要な成果の一つが"Quantum control of chemical reaction dynamics in a classical way"のタイトルでアメリカ物理学会誌J.Chemical Physics,113,(9),3510(2000)に掲載されている。3年の期間中に目的を達成することができたと確信している。その研究成果を要約する。一般に、これまで提唱されている反応制御法は一次元系の反応にはよく適用されるが多くの化学的に興味のある多自由度系には適用困難である。そこで、我々が以前開発した局所最適量子制御を多自由度系に適用できるように拡張した。そのポイントは反応系を古典力学系の粒子とみなすことにある。これにより、制御電場の振幅は反応系の線形運動量に比例するように表せる。制御パラメーターは運動エネルギー項となる。すなわち、反応の代表点がポテンシャル障壁を越えるためには運動エネルギーを大きくし、障壁を越えたなら運動エネルギーを小さくするようにして反応ポテンシャル面上の代表点の運動を制御することができる。このような、反応の直感的描像を描くことにより、多次元自由度を扱うことはができる。我々は、この方法をHCNの異性化に適用し制御電場を設計することができた。得られた最適電場は2つの平面偏光パルスである。更に、その異性化反応路が解析されている。
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