ビニルラジカルは、炭化水素の高温燃焼反応における重要な中間生成物として注目されている。加えて近年、惑星の大気圏や惑星間に存在する化学物質として反応性に関心が持たれており、基本となる分光学的性質を明らかにすることは非常に意義深い。 本研究では、キャビティーリングダウンレーザー吸収分光法により上述のビニルラジカルを検出し、分光学的データを得ることを試みた。CRDSは吸収法であるため、LIF法等では不可能な非発光種の検出に有用であると考えられる。また、有効光路長が通常の吸収法より長いため、高感度である。従って、ビニルラジカルの吸収スペクトルが精度良く求まり、第1励起状態における振動準位を解明できると考えられる。ビニルラジカルの吸収スペクトル測定時には、真空にした共振器内に約20mTorrのメチルビニルケトンもしくは臭化ビニルを導入し、ArFエキシマレーザー(波長193nm、約10mJ/cm^2)を照射して光分解する。このとき生じるビニルラジカルの吸収スペクトルを検出レーザー光の波長を走査することにより測定した。得られた吸収スペクトルは、従来報告されているものより高分解能で測定されており、新たな振電バンドが観測されている。CRDSによるビニルラジカルの検出感度は1x10^<12>molecule cm^<-3>と見積もられた。励起レーザー光と検出レーザー光の遅延時間を変化させることにより、ビニルラジカルの反応性の検討を行った。
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