研究概要 |
ゲル誘電測定システムの確立:温度制御と、電磁波シールドが優れている測定システムを確立し、ゲルに合わせた測定セルを開発した。 イオン性体積相転移ゲルの誘電分散特性の解明:イオン基・スチレンスルフォン酸を導入したNイソプロピルアクリルアミド(NIPA-SS)ゲルを合成し、(導入量は、モノマー換算で、0%(NIPA)、0.1%(NIPA-SS1),0.5%(NIPA-SS5)である。)種々の温度における、ゲルの誘電分散を測定した。同時に、既設の熱測定システムで熱の出入りの温度依存性、また、その膨潤収縮挙動の温度依存性を既設の光学顕微鏡・ビデオ観測システムで明らかにした。ゲル内でのイオンの拡散挙動の温度依存性を、我々が開発した拡散係数測定法(Bull.Chem.Soc.Jpn.,69.2173-2178(1996))を用いて調べた。これらの実験結果から、1)収縮状態のNIPAゲル内の低分子イオンの拡散係数は、膨潤状態のそれの1/100ぐらいになっていること、2)電導度もそれに応じて、減少していること、3)収縮状態では、NIPA、NIPA-SSl、NIPA-SS5いずれのゲルにおても、分散周波数1MHzの誘電分散を示すこと、4)膨潤状態のNIPA-SS1、NIPA-SS5ゲルは、分散周波数0.2MHzの誘電分散を示すが、NIPAゲルは分散を示さないことが明らかとなった。これらの実験結果は、収縮状態においてゲル内の水分子が、電気的に絶縁状態、つまり、分散したクラスターとして存在している(Water in oil状態にある)ことを強く示唆している。また、3)の結果は、収縮状態において、ゲル内の対イオンとゲル鎖のイオン基の間で強いイオン対が形成されていることを示唆している。これらの結果は、論文として発表すべく、準備中である。
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