研究概要 |
N-エチル,N-メチルフェニルグリオキシルアミド(guest(a))は,酒石酸から誘導されたキラルなホストと混合することにより,包接結晶(I)及び(II)を形成する.この包接結晶の固相光反応は,ホスト分子のシクロアルカン部位が5員環(host5)か6員環(host6)かで,異なる4員環β-ラクタム誘導体(guest(b)・gucst(d))を生成し,またその不斉が逆転する. この原因を明らかにするために,X線構造解析を行なった.(I)のguest(a)においてはエチル基が光反応に適する位置にあるのに対し,(II)ではメチル基の方がその位置を占めている.さらに,PhCOCON部位の構造が鏡像関係をとっている.これらの相違が生成物の構造を決定付けていると考えられる. 包接結晶中のゲスト分子の動きを直接観察するために,単結晶を用いた光照射実験を行なった.(I)に超高圧水銀光(λ≧340nm)を7時間照射した後のX線解析により,ディスオーダー構造(転換率約40%)が得られた.この結果から,主にエチル基がフェニル基側に接近することにより環化していることが明らかとなった.一方,(II)についても,28時間光照射後の構造を解析した.その結果,独立な二個のゲスト分子のうちの一方は4員環β-ラクタム体(guest(d))を主に生成し,もう一方が5員環エーテル化合物(guest(e))となることが示唆された.以上,本研究により,包接結晶中でのゲストの光環化反応も,X線によるその場観察が可能であることが示された.
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