七員環芳香族化合物のエキシマー形成ついて今まで報告が無い。本研究はアズレン、1-シアノアズレンを例に取り、その気相、液相、固相におけるエキシマーの探索を目的とした。その結果は次のように要約される。 (1) 超音速分子線蛍光励起スペクトル法によって分子間錯体の検出に努めたが見出すことができなかった。 (2) 溶液系でもエキシマー蛍光は観測されず全てモノマーからの蛍光に帰属された。 (3) しかし、溶液系で1-シアノアズレンのS_1からの蛍光が観測された。アズレンはS2からのみ蛍光を発するがシアノ基導入によりS_1-S_2間のΔEが減少しS_1からの蛍光が誘発されることが分かった。 (4) アズレン、1-シアノアズレン純結晶では強いエキシマー蛍光がモノマーより長波長側に約70nmシフトして観測された。これは結晶内の対構造に由来するものと考えられる。 (5) デュレン混晶中ではモノマーの蛍光のみであったのに対し、1-シアノアズレンはデュレンとエキサイプレックスを形成し、約100nmシフトした蛍光を示した。これはシアノアズレンの強い電子受容性に起因するものである。 今後、超音速分子線多光子イオン化質量分析法、結晶中に於ける極低温偏光スペクトル等を使い詳細に研究する予定である。中間報告として下記学会で報告した。 前田、鈴鹿、沼田、光化学討論会講演要旨集B015(1998)
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