研究概要 |
1. 放射光解離イオンフラグメントのレーザー誘起蛍光分光:分子科学研究所極端紫外光実験施設(UVSOR)のビームラインから供給されるアンジュレータ光を、モードロックチタンサファイアレーザーの第2高調波と同軸に真空槽に入射した。試料ガスのN_2またはN_2Oを15.8-19.8eVの真空紫外光でイオン化した。生成したN^+_2(X^2Σ^+_g,v″=0)を389-392nmのレーザー光でB^2Σ^+_u,v′=0に励起し、(B^2Σ^+_2,v′=0)→(X^2Σ^+_u,v″=1)の遷移で放出される蛍光を分光器で分散して光電子増倍管で検出した。RFイオントラップを利用することで信号強度の大幅な増加が見られた。レーザー波長を掃引して回転スペクトルを得た。回転線の理論強度分布とレーザーのエネルギー幅を考慮してシミュレーションを行い、N^+_2(X^2Σ^+_g,v″=0)の回転温度を推定した。 2. 放射光励起中性解離種の多光子イオン化:硫化カルポニル(OCS)を13-17eVのアンジュレータ光で超励起すると、高い確率で中性解離してCO分子とS原子の対を生成する。色素レーザーの第2高調波を用いて、解離ののち検出器方向に飛び出した基底状態のS(^3P_<J″>)をイオン化し、四重極マスフィルターでS^+を検出した。レーザー波長を2光子遷移S(3s^23p^35p,^3P_<J′>)←S(3s^23p^4,^3p_<J″=2>)の領域で掃引しS^+の信号強度曲線を得た。そこにはJ′=1,2の中間状態への遷移に対応するピーク成分が269.290nm付近に観測された。また、レーザー波長を固定し、放射光の光子エネルギーを掃引することで、S(3S^23p^4,^3p_<J″=2>)の部分中性解離断面積曲線の測定も行った。本研究によって、真空紫外領域で生成する発光も自動イオン化も起こさない中性解離種をレーザー分光法で直接的に検出することが可能となった。
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