研究概要 |
気相N_20分子を室温下のもと真空紫外放射光でイオン化し、生成したN_2^+(X^2Σ_g^+,v_x=0)の回転分布を、389-392nmの範囲に渡りX→B遷移を利用したレーザー誘起蛍光法で測定した。放射光の光子エネルギーはN_20^+(C^2Σ^+に収斂する3dπリュドベリ状態(励起エネルギー18.556eV)に合せた。蛍光の検出には427nm付近の(B^2Σ_u^+,v_B=0)→(X^2Σ_g^+,v_x=1)遷移を用いた。回転線の理論強度分布とレーザーのエネルギー幅を考慮してシミュレーションを行った結果、N_2^+の回転温度は約220Kと求められた。従って、3dπ状態の自動イオン化で生成するN_2O^+(B^2II)が前期解離する際に、回転温度の冷却が引き起こされたことがわかる。N_20^+(B^2II)の平衡構造は折れ曲り形が安定であり、またその解離寿命は約60fsと変角振動の周期に比べて長いので、解離は主にC_s対称性から進行すると判断した。そこで、LeveneとBalentiniによる"modifiled impulsive mode1"の取扱いに従って、N_20^+(B^2II)の屈曲角∠NNO=θが曲がるに連れてN_2^+の回転エネルギーがどう変化するのかを古典的に計算した。このモデルでは結合の開裂が瞬間的に起こり、かつN-N結合が堅く余剰エネルギーがN_2^+の振動励起には分配されないことを前提としている。解析の結果、N_2O^+(B^2II)イオンの解離の振舞いは、「N_20^+(B^2II)の回転の寄与に基づくN_2^+の回転角運動量」と「瞬間的解離の寄与に基づくN_2^+の回転角運動量」が平行方向を向くいわゆる"Low J"の極限に従うと結論された。即ち、元々のN_2O^+(B^2II)の回転運動を打ち消す方向にエネルギー放出が起こると予想された。これは系の軌道角運動量が最大になる場合に相当し、解離しつつあるN_2O^+の感じる遠心カポテンシャルが大きいほうが前期解離を起こしやすい傾向を示唆している。
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