研究概要 |
1.気相N_2O分子を真空紫外放射光でイオン化し、生成したN_2^+(X^2Σ_g^+, v"=0)の回転分布を、X→B遷移を利用したレーザー誘起蛍光(LIF)法で測定した。理論強度分布でシミュレーションした結果、N_2^+の回転温度が220Kと求められた。従って、N_2O^+(B^2II)が前期解離する際に、回転温度が冷却されたことがわかる。"impulsive model"に基づいて、N_2^+の回転エネルギー変化をN_2O^+(B^2II)の屈曲角∠NNO=θの関数として計算した。この理論では結合開裂が瞬間的に起こることを仮定している。解析の結果、θ=130度以上でN_2O^+(B^2II)が解離すると結論された。 2.中性解離断片を対象とし、LIF法を用いてCH^3CNから生成するCN(X^2Σ^+, v"=0)ラジカルを検出した。CN(B^2Σ^+→X^2Σ^+)発光の信号検出に成功し、光子エネルギー13.6-18.6eVの範囲で、蛍光強度の放射光波長依存性を求めた。蛍光信号の敷居値15.4eVから、CN(X^2Σ^+)ラジカルはCH_3CNの解離性イオン化の結果生ずるものと結論された。CN(X^2Σ^+)の生成断面積は0.1-0.5Mbと見積もられた。 3.硫化カルボニル(OCS)の放射光励起で生成する解離種の発光分光を行い、蛍光分散スペクトルおよび蛍光励起スペクトルを測定した。励起光の光子エネルギーを15-30eV、蛍光波長を340-700mmの範囲で変化させた。新規集光系を開発し、発光断面積10^<-3>Mb以下の極微弱光まで観測することが可能となった。蛍光分散スペクトルにはOCS^+(A^2II_Ω-X^2II_Ω),CO^+(A^2II-X^2Σ^+),CO(d^3Δ-a^3II)の発光バンドシステムが現れた。さらに、S原子のS^*(nd^3D^0→4p^3P^e)発光が観測されたことから、光励起でリュドベリ型のOCS解離性状態が効率よく生成されるものと推測された。
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