超流動ヘリウム中におけるヨウ素分子の解離・再結合ダイナミクス

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10640506
• 研究機関: 理化学研究所
• 研究代表者: 丑田 公規 理化学研究所, サイクロトロン研究室, 先任研究員 (60183018)
• 研究分担者: 高見 道生 理化学研究所, 無機化学物理研究室, 主任研究員 (40087440) ; 笠井 康子 郵政省通信総合研究所, 地球環境計測部・環境計測技術研究室, COE研究員 (60281630)
• キーワード: フェムト秒分光 / 光化学反応 / 励起状態 / 極低温反応 / 液体ヘリウム / 近赤外分光 / 超高速反応 / 超流動ヘリウム

研究概要

本研究においては、液体ヘリウム系を測定対象にし、フェムト秒で起こる現象を測定することが研究における最も重要なハードルである。本年はそのフエムト秒現象の測定系の充実を図り、フェムト秒レーザーを中心にした測定装置の改良および充実に費やした。まず、ボンブブローブ分光において、800nm以上の長波長近赤外領域でのブローブ光を発生させ、それを検出するための測定装置の改良を行った。近赤外ブローブ光は光パラメトリック効果発生器を用いる単一波長測定方法と、サファイア固体の自己位相変調光を用いた多波長1ショット測定の2つの測定方法を用いることとした。その後者の測定のために、1100-1700nmに感度を有するInGaAsマルチチャンネル検出器を有する分光器を購入し、フェムト秒領域でのポンプ.プローブ分光を行う準備を行った。
一方ヘリウム系の測定にはレーザー光による泡の発生を最小限に押さえる必要がある。現在用いているレーザーは、1kHzの繰り返しで運転され、パラメトリック光や自己位相変調光を安定に発生させるためには、この繰り返しを変更することは難しい。そこでこのパルス数を間引くために、ガルバノモーターを用いた新しいシャッターを開発し、チョッパーと同期運転することで、100Hzより遅い任意の繰り替えし数での測定をすることができた。これにより泡の発生、光励起による励起状態の飽和の解消が実現すると思われる。このパルス数の間引き操作は、単一波長測定方法と多波長測定方法の両方に適用することができる。

研究成果

• [文献書誌] J.Rabani, K.Yamashita, K.Ushida, J.Stark, and A.Kira,: "Fundamental Reactions in Illuminated Titanium Dioxide Nanocrystallite Layers Studied by Pulsed Laser." The Journal of Physical Chemistry B. 102・10. 1689-1695 (1998)
• [文献書誌] H.Imahori, H.Norieda, S.Ozawa, K.Ushida, H.Yamada, et al: "Chain Length Effect on Photocurrent from Polymethylene-Linked Porphyrins in Self-Assembled Monolayers." Langmuir,. 14・19. 5335-5338 (1998)
• [文献書誌] T.Kluge, A.Masuda, K.Yamashita, and K.Ushida.: "Effect of Charge and Structure of Hyaluronic Acid on the Luminescence Quenching in Aqueous Solution." Photochemistry And Photobiology. 68・5. 771-775 (1998)
• [文献書誌] K.Kamada, M.Ueda, K.Ohta, Y.Wang, K.Ushida, and Y.Tominaga,: "Molecular Dynamics of Thiophene Homologues Investigate by Femtosecond Optical Kerr Effect and Low Frequency Raman Scattering Spectroscopies" The Journal of Chemical Physics.109・24. 10948-10957 (1998)
• [文献書誌] Y.Wang, K.Ushida, Y.Tominaga, and A.Kira: "Molecular Dynamics of Acetophenone and its Derivatives Investigated by Femtosecond Optical Kerr Effect and Depolarized Low-Frequency Raman Scattering" Chemical.Physics.Letters. 299・6. 576-582 (1999)
• [文献書誌] K.Ushida, M.-H.Liu, and Y.Izumi: "Photocontrolled Selective Isolation of UO_2^<2+> from Aquieous Solution onto a Quariz Plate Covered with LB Film." Separation Science and Technology. 34・3. 356-367 (1999)