研究概要 |
有機硫黄化合物が示す特性のうち、以下の不斉誘起反応を有機合成に使用出来るレベルにまで向上することを目的として、 1) プロキラルなエノラート類のエナンチオ面選択的プロトン化の検討とその応用、 2) エピスルホニウムを経由する不斉ポリエン閉環反応、 を検討してきた。平成10年度の本研究では以下の実績を上げることができた。 ◎ プロキラルなエノラート類のエナンチオ面選択的プロトン化の検討とその応用: 我々は光学活性β-ケトスルホキシドより容易に導くことが出来るヒドロキシスルホキシドが既存の不斉プロトン化剤のなかで最高の強力な不斉認識能を有することを見い出し、その一般性を検討している途上、4位に酸素官能基がある場合、面選択性が逆転することの原因を究明した。その結果、共存する無機塩が大きな役割を担っていることを明らかにし、更にこの系で絶対立体化学が未知な化合物についてその絶対構造を決定する新規な方法を提出した。これらの結果についてThe 5th International Symposium on Carbanion Chemistry(Sendai),日化第75秋季年会(松山)で発表した。 ◎ エピスルホニウムを経由する不斉ポリエン閉環反応: 光学活性β-ケトスルホキシドより導かれる光学活性α-ヒドロキシスルフィドを出発物質としてポリエン閉環反応に関して閉環反応機構の解明と本反応の応用として抗腫瘍活性を有する化合物の不斉合成の途中経過を18th International Symposium on the Organic Chemistry of Sulfur(Florence)で発表した。
|