研究概要 |
ローソン試薬[2,4-Bis(p-methoxyphenyl)-1,3,2,4-dithiaphosphetane-2,4-disulfide(LR)]はカルボニル基をチオカルボニル基に変換する優れたチオネーション試薬としてよく知られている。我々はアルコールをLRと反応させると効率よく相当するチオールが生成するアルコールのチオールへの直接変換反応を見いだした(J.Chem.Soc.Chem.Commun.,1989,205;J.Chem.soc.,Perkin Trans.I,1993,1113)。この新規反応を利用して、同一分子内にヒドロキシル基、アミド基やカルボニル基などの官能基を含む化合物とLRの反応による簡便な含硫黄複素環化合物の合成に成功した。今回、二官能基化合物、3-(N-アシルアミノ)アルコール、および三官能基化合物、N-アシルトレオニンとLRの反応を検討した。 1.Nアシルアミノアルコール誘導体とLRの反応 3-(Nアシルアミノ)アルコール誘導体とLRのトルエン溶液を加熱還流すると立体選択的に反応が進行し、出発物質の立体を反映したチアジン誘導体が生成した。中間にアシルアミノチオールを経由する反応機構を明らかにした。 2.N-アシルトレオニンとLRの反応 N-アシルトレオニンと当量のLRをトルエン中、加熱還流するとチアゾリノン、オキサゾリノン誘導体が生成した。この反応によってLRに対する各官能基の反応性の違いを明らかにした。さらに生成物の反応機構に関しても考察した。 以上の反応は含硫黄複素環化合物の新規、かつ簡便な合成法として有用な方法となる。
|